「シルクスクリーン印刷は、僕の相棒」この道20年、オリジナルグッズ制作を支えるシルク職人

「シルクスクリーンは、相棒のような存在。一緒ならどこにでも行ける」
そう語るのは、一人のシルクスクリーン職人の男性。

ノベルティカフェが手がける数々のオリジナルグッズの印刷を、長年担当してくれています。

どんなに難しいデザインでも、逆にシンプルなデザインでも、変わらずに美しく耐久性のある仕上がり。

彼の手を経て印刷され、完成したグッズを手に取る時は、いつもしばらくの間目を奪われます。

実は、とてもシャイな方。ご自分が表に出ることを、好まないのです。
この記事でも、お名前やお写真はNG。それでも、お客さまのこだわりに対して、まっすぐ向き合ってくれるこの方をご紹介したい!
そう思って、突撃してきました。

日本のどこかで、今日も手を動かしている一人のシルクスクリーン職人さん。読んでくださった方の心に届くものがあったら嬉しいです。

(Profile)
シルクスクリーン印刷を始めて20年。高校卒業後は、日本全国を旅しながら、さまざまな業種を経験する。その後、父親の仕事であったシルクスクリーン印刷を手伝うべく、一念発起。一年間、学校でシルクスクリーン印刷を学んだ後、家業を受け継ぐように。

シルクスクリーン印刷とは

シルクスクリーン印刷の歴史は、1900年代はじめごろに遡ります。アメリカから日本に技術が伝えられたのは、1917年と言われています。

メッシュ状の版に孔(あな)を作り、孔の部分にだけインクを落とす印刷方法で、さまざまなものに対して印刷することができます。
かつては、このメッシュの部分に絹が使用されていたことから「シルクスクリーン」と呼ばれているそうです。

使用されるインクは、耐久性が高いという特徴があります。インクを染み込ませるのではなく、インクを表面に乗せて熱で乾燥させて定着させるためです。そのため、シルク印刷は色褪せしにくく、簡単にははがれません。

こうして説明すると、とてもシンプルな仕組みですよね。だからこそ、シルクスクリーン印刷は、手がける人の技術によって仕上がりに差が出やすいのです。

テント張りの旅人から、メッシュ貼りのシルクスクリーン職人に!?

ーーそもそも、どのような経緯でシルクスクリーンの職人になることを決めたんですか?

シルク印刷は、もともとは私の父の仕事だったんです。そのため、幼少期からシルクスクリーンは身近な存在でした。中学、高校と成長するにつれて、自分が着ているTシャツの柄がシルクスクリーンで印刷されていることを知り、いずれ自分もやってみたいと頭のどこかで思っていました。

ーー幼少期からシルクスクリーンが身近にあるって、なかなかない経験ですよね。

そうですよね。もちろん、友達のお父さんでやっている人はいない、自分の父しかやっていない仕事というのは、特別な感じがしていました。でも、高校卒業後にすぐシルクスクリーンを始めたわけではなくて。実は就職もせず、旅人になって放浪していたんです(笑)

ーーえ、旅人ですか!?

はい。北海道から沖縄まで旅をしました。北海道では鮭の加工をしたり、沖縄ではサトウキビ狩りをしたりしながら生活をしていました。現地には、同じような旅人が集まっていたので情報交換をしたり。テントを張り、自炊をして…。当時は、一生旅人で生きていくんだとも考えていました。でも、旅をする中でいろいろなことを経験して、気がつくと実家に戻っていたんです。それから実家の近くでアルバイトを始め、一年間学校へ通い、シルクスクリーンを学び始めました。

ーー旅の果てに、結果としてご実家に戻られたんですね。戻ってきた時のご両親の反応は、いかがでしたか?

実家に戻って、僕は工房の中に自分の机をつくり始めたんです。はじめは、父も「何やってんだ」という感じでした。でも、僕の様子から「これはシルクスクリーンの仕事をやるんじゃないか」と感じていたようです。そこから少しずつ、父から仕事を頼まれるようになりました。

ーー早速、シルク印刷のお仕事を。他のお仕事に就くことを考えたりはしなかったんですね。

考えなかったです。シルクスクリーンの仕事を始めたころは、5年くらい続けば…、と思っていましたが、もう20年になりますね。今も日々、シルクスクリーンについて新しい気づきがたくさんあるんです。お仕事をする中で学ばせていただくことも多く、楽しいですね。

ーー20年たっても新しい気づきがあるって素敵です!お仕事の流れとしては、お客さまから依頼を受けて、Tシャツやポーチなどの素材を提供されて印刷をして…、という感じですか?

そうですね。普段は、工房でお客さまからの依頼に合わせて印刷をしています。過去には、ワークショップをしたこともあります。印刷博物館という、印刷の歴史が展示されているところがあるのですが、そこでさせていただきました。印刷の様子をお客さまにデモンストレーションしたり、舞台をしたりも(笑)。

ーーえぇ! 見たかったです! 

はい。即興パフォーマンスをする人がいて、パフォーマンスの中でシルクスクリーンを使いました。トイレットペーパーのように長い紙に印刷をしながら、黒子の格好をした出演者たちが紙を引っ張っていきます。僕もそこに印刷をして、紙を引っ張って…とやりました。ある程度の長さの印刷をしたら、紙をカットして、お客さまに配るんです。

当時のパフォーマンスの様子を、パンフレットで見せていただきました!

ーーなるほど! 臨場感があって楽しそうですね。

即興パフォーマンスをしていた方が、ものすごく高まってきて。最後に上の服を脱いで「もう、お腹に刷ってくれ! 」と(笑)。

ーーお腹に! 難しそうですが、無事に刷れましたか?

意外と綺麗に刷れました。お腹は柔軟で柔らかいので、印刷できますね。固かったら難しかったのかもしれません。

布や紙ではない、普通はやらないような印刷を体験させていただくことは、いい勉強になります。どんなものでも「こうしたら印刷できるんじゃないか」と考えることができるので、学びになりますね。すごく記憶に残る体験でした。

パートナーであるシルクスクリーンのように柔軟に、多くのことに対応していきたい

ーー今日は、お話を伺わせていただくだけじゃなく、実際に印刷も体験させていただきました。体験してみて、シルクスクリーンの面白さや自由度の高さに驚きました!

わあ、嬉しいです。シルクスクリーンは、本当に柔軟性の高い印刷技法だと思っています。色も自由につくることができますから。赤と一言で言っても、色の混ぜ具合によって好みの赤色にできるし、ラメやメタリックもツヤや細かさを好きなように調整することができます。

ーー技術が進歩してデジタル化は進んでも、シルクスクリーンが持つ良さは別物、越えられないものがあると感じました。

そうですね、シルクスクリーンには、プリンターでは表現出来ないものがあると思います。

ーーいつも、少し難しい依頼でも快く受けてくださって本当に助けられています。今後、どんな風にお仕事をしていきたいとか、もしお考えがあったら伺いたいです。

やっぱり、楽しくお仕事をしていきたいですね。もちろん、出来ないご依頼はお断りすることもあります。でも、面白そうなものや、自分自身学びになることは多少無理難題でも工夫を凝らしてやってみようとチャレンジします。できるかな? と考えて工夫してみることは、面白いんですよ。

ーーぜひこれからも一緒に、ものづくりを楽しんでいけたら嬉しいです!


この日は、シルクスクリーン印刷の体験もさせていただきました!
ワークショップの様子は、こちらの記事からご覧いただけます。

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